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ランバートの案内でそちらに馬首を向けて十分少々、目の前の木立の合間から青く光る泉が見えだした。
「見晴らし最高じゃん」
嬉しそうにボリスが口笛を吹き、側でコンラッドが「蛇が出る」とか言っている。その様子を笑いながら、一行は休憩地へと向かった。
泉は涼しい風を運んでくる。馬の鞍を外してやると、後は勝手に草を食み、水を飲む。軍の馬は賢くて、こうして離していても勝手に何処かに行くことはない。そのような訓練がされているし、例え離れても指笛を吹けば駆けてくる。
「賢い子達ですね」
レーティスが穏やかに微笑んで馬にブラシをかけてやっている。気持ち良さそうにする馬の首も撫でながら、彼は笑っていた。
「貴方は本当に穏やかですよね」
「まぁ、本来は争いは苦手です。傷つけ合うのは、見るのも苦しいですから」
それは苦笑になったが、本心なんだろう。やがてブラシを終えた馬もゆっくり離れていった。
「矛盾しているとは、思うのですがね。争いは嫌いなのに、その渦中にいるというのは。ただ故郷を守りたい、信じた主の力になりたい、その思いだけでここまで来ましたから」
「文官の方が似合いだと思うけれど?」
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