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「ふふっ、本当に。まぁ、主が国を取りもどしたらそれも良いなと思っていますよ。田舎の領地で、領民と国の為に平和な時間を。それが、私には似合いだと思います」
その為に今は戦う。そういう決意を見せる瞳を見て、ランバートは一つ頷いた。
そんな穏やかな時間が各所であり、馬も十分に休まった。そろそろと思い馬に装備を乗せていたくらいに、風に乗って少女の悲鳴が微かに聞こえた。
「今の、悲鳴だよな?」
驚いて辺りを見回したのはチェルルだけじゃない。ボリスやゼロス、そしてアルブレヒトも辺りを見回し声の主を探した。
「少し遠い。泉の向こう側かな?」
「少女っぽかったよね?」
「誰か、いるのか?」
言ってはなんだが森の中だ、少女というのはちぐはぐだ。でも、まったく可能性がないとは言えない。国境前線に荷を運ぶ商人などはいるし、近くの森で食べられる木の実を集める事もある。
それにバロッサの少年少女のように森に住んで人前に出られない子がいてもおかしくはない。国境なら、他国から違法に入ってきた不法移民だ。
「とりあえず、見てくる」
「ゼロス、一人で行くなよ。ボリスの他に、腕の立つのがもう一人」
「そんなら、俺がいくかね。最近運動不足だ」
ダンが立ち上がり、ガタイのいい男三人が泉の対岸を目指して素早く移動していく。その背をクリフとコナンが心配そうに見守っていた。
「妙です」
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