森の少女

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「……酷く惨い仕打ちを受けた者や、そういう光景を心が壊れるまで見せられた者がたまになります。生きているのに、死んでいる。悲しみや怒り、憎しみ、苦しみ。そんな感情すらも失ってしまった。そんな感じがします」  「読めない」と、アルブレヒトは呟いて少女から離れた。そして絶対に、触れようとはしなかったのである。  その後、ここよりはもう少し進みたいと全員が馬で進んだ。少女はダンが馬に乗せている。  アルブレヒトは「お家に返してきなさい」と、まるで犬猫を拾った子供に母親が言うように言ったのだが、流石にそれはできないと彼以外が判断した。なにせ二人取り残している。戻ってきたら確実にこの少女はまた辱めを受けるだろう。  それに戦争が始まる。あの場所では確実に巻き込まれるだろう。保護するにしても、まずは騎士団に預けなければ。  そうして夕方近くまで進んで野営を組んだ。料理はランバートとコンラッドが、水や薪は二人一組で力の少ない面々が集め、力のある面々が周囲を見回り整えていく。  そのうちに少女は目を覚ましたが、まるで抜け殻のようだった。瞳は何も映していないようだし、声も発しなかった。ぺたんと座ったまま、呆然としている。  これを乱暴を受けた事による心神喪失と取るのか、それともアルブレヒトの感じる異質と取るのか、全員が戸惑った。     
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