森の少女

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 それでも食事として温かなスープを渡せば、大人しくそれを食べている。さて、どうしたものかだ。 「アルブレヒトさん」 「わかりませんよ、私には。あの子からは何も感じられない。なのに周囲は酷い臭いと死者の思念が渦巻いているんです。こうなれば、私もただの人と同じ感覚しか持ちません」  そうまで言われてしまうと何とも言いがたい。  このまま連れて行くのがいいのか。それとも。でもやはり、非情な決断はできないままだった。  その夜、二人一組で火の番と警戒をしていたが、ランバートは眠れないままだった。寝付けずに体だけを休めていると、不意に背後からガサガサと音がした。 「誰だ!」  緊張も相まって声を出し、火の番をしているチェルルがすぐに松明をそちらにかざす。  森は真っ暗なまま。だが確かにその闇の中からズズゥ、ガサガサという何かを引きずるような音がしている。  眠っていたはずのキフラスもきて、闇の方へと視線を向ける。やがてゆっくりと、闇の中から這いずる手が見えた。 「ひぃ!」  気の弱いコナンは声を上げて体を引く。明らかにホラーだ。木々の根が隆起するような森の奥から、血色の悪い傷だらけの腕がにょっきり地を這うのだから。     
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