森の少女

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 次第に全体が見えてくる。それは、男だった。ボサボサの髪は数日は確実に洗っていないし、血色も悪い。目つきも悪くヒゲもはえて、上半身は裸だろう。  だが間違いなく生きている人間であり、被害者だ。男の背中には刃こぼれのした剣が突き立っていて、血を流していた。 「だ……だずげでぐでぇ」  ダミ声のまま口から血の泡を吐いて男は最後まで手を伸ばす。だがその手は途中で落ちた。持ち上がった頭部、その首の後ろに突如矢が突き立ったからだった。 「敵襲!!」  ランバートの声にすぐに臨戦態勢を取る。アルブレヒト、コナンは中心にいて援護射撃、クリフは後の後方支援の為にアルブレヒトの側にいた。そして保護した少女もその側へと置かれた。  襲撃者は十数人だが、先に襲ってきた屍のような奴とは違う。基本の武器は弓なのだろうが、数人は剣を使ってくる。明らかな殺意があり、言葉はないものの手応えがあった。 「こんな奴等が忍び込んでるのかよ!」 「砦についたら絶対に報告だ!」  連携が取れている。接近戦を得意とする者が切り結んでこちらの動きが止まる。そこにすかさず矢が飛んでくる。     
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