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「その子、既に死んでいますよ」
「え?」
アルブレヒトの言葉に、エリオットもランバートも言葉を飲んだ。嫌な空気が、辺りを包んでいく。
「彼女の周りに、ずっと男の子がいましたが……そう、弟でしたか。あまりに存在が弱くて、話ができなかったのですが」
「一体、いつ……」
「数日しか経っていません。彼女が帝国へ向かった後、すぐといった感じですか」
「酷い……なんて惨いことを」
エリオットまで睨むように体を震わせている。ランバートにも、怒りが湧いてくる。まるでスラム時代の苦しい思いが戻ってきたようだ。
「ランバート、憎しみに呑まれては大義を見失います。貴方の大切な人が悲しむ事は、すべきではありませんよ」
やんわりと言われ、思いとどまる。剣に触れ、気持ちを落ち着かせた。
この剣は背負った十字架。過去を背負い、同じ過ちを繰り返さないための戒めでもある。そしてこの剣で未来を切り開いていく。そうすることで、過去を清算するのだ。
「敵の宰相、ナルサッハは手に入れたラン・カレイユを兵を供給するための道具としているようです。自国から犠牲を多く出せば批判が強いから」
「占領地を私物化し、関係のない人々を捕らえては戦場に投入しているということですか?」
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