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バロッサへ向かう(ファウスト)
「突出するな! 前線を維持しろ!!」
アシュレーの怒号に似た声が飛ぶ戦場。目の前にはジェームダル兵が必死の形相で剣を握っている。
おかしい。何故こいつらは今出てきたんだ?
唐突だった。朝一でラジェーナ砦の門が開いたと連絡があり、そこから数万の兵が出てきたとの報告があった。すぐに迎撃の準備を整え、まずは五百で砦を出たのだが、それで事が足りている。
数万、おそらく二万程度だ。本来この数を五百で抑える事は難しい。その為追加を準備させ、ファウストが先頭に立ちアシュレーを後方に下げて対処をさせたのだが、追加を出す必要なしと戦っているファウストでも分かる。
素人だ、こいつらは。粗末な装備を付けさせ、安い剣を握らせただけの一般人だ。
「う……うわぁぁぁ!!」
「っ!」
半分腰が抜けたへっぴり状態で、それでも向かってくる兵を切り伏せる。
最前線、ファウストの周囲を囲む敵が奇声を上げながら向かってくるのを近寄らせることもなく切り倒しながら、ファウストは奥歯を噛み締める。
「抵抗しなければ命は取らない! 降服しろ!!」
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