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私は友人の佑子に呼ばれ、駅近くのファミレスに行った。着くと佑子はもう席に座ってペペロンチーノを食べていた。
「遅いじゃないの、何してたのよ。遅れた割には大した恰好じゃないし」
私は特に遅れたわけじゃなかったが、佑子はいつもこんな調子だったので軽くごめんと言って終わらせた。
「まあいいわ食べな。何にする?」
「私もう食べたからいい。」
「何言ってんのよ、私だって食べてきたわよ。もう2時よおなかすかないの?」
「うん、大丈夫」
「そんなこと言ったら私があなたの分まで食べなきゃいけないじゃない。どうしてくれるのよ。」
そう言いながらも佑子はじっくりとメニューを見てナポリタンの大盛を頼んだ。
「それより佑子、話って何?」佑子は私がそう言ったとたん顔を曇らせてうつむいた。さっきまで元気そうにしていたので正直わざとらしいなと思った。
「私ってさ、某有名ハンバーガーショップで働いてるじゃない。」
「ええ、マスコットキャラがあんまりかわいくないピエロのお店よね。」
「あんた来たことあるからわかると思うけど私ってレジの係なのね」
それはすごくよく覚えている。佑子のいるお店に何度か行ったことがあるのだが、ほかの人に注文した時は普通なのに佑子に注文をしたときだけ心なしかポテトが少ないような気がするのだ。それが何回も続くので佑子本人に聞いてみると、出す前に3分の1ほど味見をすると陽気にいった。私は驚いて、そんなことをしてばれないのかと聞いたら、ばれるようなスピードではやらない、マジックのように一瞬で消すのだといった。私は呆れたが、少し興味が出てきたのでハンバーガーはどうやって味見をするのかと聞いた。佑子はハンバーガーはパンをかじってしまうと包みをはがした瞬間にばれてしまうといった。それで私がそれならハンバーガーの味見はしないんだねと聞くと、いいやする。だから私のハンバーガーには中身が無いのだといった。私は大いに笑ったがそれ以来佑子の店に行くのはやめてしまった。
「あんたまだレジやってたんだ。」無意識に敬服の念のようなものが混じってしまった。
「そうよ、おかげで10キロも太っちゃった。」佑子はもとからかなり大型だったため10キロ増えたことはあまり気づかなかった。
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