お詫び

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農民の出身であれば、本来は農民に対して優しくてもいいだろう。ところが、魔王はそうはならなかった。貧しい生活しかできない己の家族を恨んだのだ。生まれ育った村を飛び出し、勇者としての力をつけた。自身を選ばれし者と自称している強烈な自意識は貧しい少年時代のコンプレックスの裏返しだ。 王の座についてから農民に対しての扱いはひどい。歯向かう者は連れ去られ密かに抹殺される。識字率が大幅に下がっているのも意図的なものだ。歯向かう言葉自体を刈っている。村を分断し、わざとつながりを希薄にさせて情報を巧みに遮断する。国民は狭い世界こそが全てだと思い込むようになる。 武力で現体制をひっくり返そうとした者が何人もこっそりと葬られてきた。王に対して批判的な言葉を口にした者は容赦なく連行され殺されている。 そして、そんな事実を隠蔽する為にゴブリンを迫害する。ゴブリンは確かに粗暴な者も多い。しかし、善良で賢いゴブリンも存在する。しかし、魔王はゴブリンを全種族共通の敵と見なし迫害しているのだ。 前魔王がゴブリンの出自であったこと、そして農民時代にゴブリンに何度も畑を荒らされた経験が、魔王をゴブリン迫害へと向かわせた。 今やゴブリンとして生まれただけで、腕を斬り落とされたり、足を斬り落とされる。そんな蛮行を平気でおこなっているのだ。 私、イムー自身が、腕を斬り落とされたゴブリンの農夫である。
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