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毎年毎年、なんでこんなことやらなきゃいけないんだろう。と、家業に疑問を持ち始めたのは、小六ぐらいからだったように思う。
特に六月の田植えと十月の稲刈りの時期になると、当たり前のように手伝い要因の一人に数えられているのがいやになった。
そもそも俺は田んぼになんか興味がない。
だから、じいちゃんが米作りに必死になっている姿がくだらなく見えてきた。
そんな不満が爆発したのが、中学二年の田植えの頃だった。
「もうやってらんねぇ」と、思春期まっただ中、反抗期も手伝った俺は、植えるはずだった稲を田んぼに投げ捨てると言った。
「なんで俺がこんなことを手伝わなきゃいけないの? 意味分かんねぇ。強制労働とかほんともう無理。田んぼとかどうでもいいわ。俺はもうやめる」
突然の俺の豹変っぷりに、その場にいた家族と手伝いに来てくれていた晴や晴の家族が固まった。
「豊作? 急にどうしたの?」
母が困惑した様子で尋ねてきたので、俺は言った。
「いや、ずっと思ってたんだけど、マジでアホらしくなって」
「なにがアホらしいんだ」
じいちゃんがいつにも増して恐い顔で立っていた。
内心びびっていたが、俺はそれでも引かなかった。
俺は間違ってないという自信があったのだ。
「アホらしいだろ。こんなに毎年毎年、働かされて。たいした米もできやしないのに」
「たいした米もできないだと?」
「そうだよ。じいちゃんは、日本一の米を作りたいとか、でっかい夢を語って自分に酔ってるから分からないんだと思うけど、こんな場所で日本一の米を作るなんて、現実的に考えて無理だから。コシヒカリとかあきたこまちとか作ってる、東北の有名な米所には絶対に敵わないんだ。それなのに……」
「そんなこっなか!」
じいちゃんが怒鳴り声をあげた。
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