第三話 雨と雷

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 驚いてじいちゃんを見れば、じいちゃんは顔を真っ赤にして憤怒していた。 「そげんことなか。おいが育ててる『あきほなみ』じゃって、そんうち、全国にその名をとどろかせる米になっとよ。日本一の米になっとよ。そんために、毎日毎日、こうして愛情込めて米作りをしちょっとじゃ。毎年、今年はおいしい米になれっち願いを込めちょっとじゃ。それを、お前という奴は……」  額に青筋を立てたじいちゃんは、言いながらずかずかと俺に近づいてきた。  そして、あっという間の出来事だった。  左頬に衝撃があって、次の瞬間には田んぼの中に倒れていた。  呆然としている俺を見下ろしたじいちゃんは、肩で息をしながら言ったのだ。 「そげん奴に田んぼを手伝われたくなか。出て行け!」  売り言葉に買い言葉だった。 「そんなの願ったり叶ったりだ。一生田んぼなんか手伝うか!」  俺はじいちゃんに言い返すと、その日も同じように田んぼを飛び出して、家とは反対方向へと走り出したのだ。  あの日と同じように逃げ出して、たどり着いたのは郡山八幡神社(こおりやまはちまんじんじゃ)だった。  石作りの鳥居を抜けて、参道を抜けると朱色の社殿にたどり着く。  雨と雷がすごいので人の姿はない。  ひとまず雨をしのごうと、社殿の軒下に膝を抱えて座り込んだのが少し前のことだ。 「はあ」  溜息しか出ない。  やっちまったって気持ちと、やられたって気持ちがない交ぜになって、なんとも言いがたい感情が胸に渦巻いている。
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