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「……こわっ。恐ろしい。何でこんな不気味なもんが、こんなとこにあるんだよ」
それにしても、どこか作り物めいている。やっぱり人形っぽい。それならその方が何百倍もいいに決まっている。
俺は指先で足の先をつついてみることにした。ちなみに、足首から先は白い足袋に包まれている。日本人形なのかな。
ぴくっ。
「!!」
つついた瞬間、足首が反応を示した。
「う、う、うごいっ、動いた!」
二本の足はさらにジタバタと動き始めた。
「ひぃっ!」
尻餅をつく俺の前で、二本の足はバタバタしている。
「~~~~~~~~~んんんぅ」
土の中から微かにうなり声が聞こえた。
「~~~~~~~~た、……けて」
声はだんだんはっきり聞こえてくる。
「た、けて……、たすけて」
「うん? たすけて? 助けてだと?」
「……けて、たすけてぇ」
声は女の子のものに聞こえた。
俺は立ち上がると、ばたつく二本の足にそっと触れた。柔らかなふくらはぎには、確かに体温がある。
生きてる!
そう思ったらもう無我夢中だった。あらん限りの力を込めて、二本の足を引き抜く。と、意外と簡単に足は地面から抜けた。
「うわぁ!」
あまりにも簡単に抜けすぎて、反動で背中から田んぼに落ちた。
「いってぇ~」と言うほど、痛くもなかったが、落ちたのが田んぼでよかった。ほっとして目を開けると、目の前に大きな瞳があった。長いまつげに縁取られた二つの瞳がじっと俺を見下ろしている。その目は見たことのない色をしていた。鈍い黄金色。なにかに似ている色だ。その目がにっこりと笑った。
「あたいはたのかんさぁじゃ」
鈴を転がすような、愛らしい声だった。
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