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病院のベッドの上で寝ていたじいちゃんは、腕にも足にも包帯を巻かれた姿で、対面した俺は思わず後ずさった。
落雷の直撃は免れたのだが、右腕に電流を受けて火傷を負ったらしい。
そして、倒れた際、足を変な方向に捻ってしまったらしく、骨にヒビが入ったとのことだった。
結局その日は、家族全員と晴で面会終了時間まで病室にいたが、鎮痛剤が効いて眠っていたじいちゃは目を覚ますことはなく、俺達は家に帰ることになった。
家に帰り着く頃にはすでに夜の九時を過ぎていた。
ばあちゃんと母と実がてきぱきと用意してくれた、そうめんと梅おにぎり、刻んだとハムとネギの入った卵焼き、トマトやきゅうりを切ったもの、ナスの漬け物をみんなで食べた。
それから、俺は遅くまで付き合ってくれた晴を家まで送っていくために家を出た。
街灯がほぼなく民家もない夜道はどこまでも暗い。
隣の家といっても、歩けば十五分くらいかかる晴の家まで、懐中電灯をたよりに歩く。 田んぼからはカエルの鳴き声や、低いウシガエルの声、虫たちが好き勝手に鳴いている声が聞こえてきた。
俺はそれらの声を耳にしながら、ただぼんやりと歩いていた。
「ばあっ!」
「うわあ!」
だから、突然の大声に驚いて飛び跳ねる。
地面に向けていた懐中電灯を声の方に向けると、晴がくすくすと笑っていた。
「な、んだよ、急に。おどかすなよ」
「ふふふっ、びっくりした?」
「当たり前だろ。心臓止まるかと思ったし」
「それは、失礼しましたね」
晴は悪びれもせず楽しそうだ。
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