第三話 雨と雷

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「豊作って、普段は澄ましてるっていうか、なんでも平気そうなのに、意外とビビりだもんね」 「うるさい。余計なお世話だ」 「それなのに、たまにすごく勇気のある行動するから、驚いちゃう」 「はあ?」  暗闇にだいぶ目が慣れてきたようだ。  明かりがなくても、前を向いた晴の髪を、風が揺らしたのが分かった。 「豊作は昔から雷が大の苦手なのに、そんな雷が鳴る中家を出て行った。それだけでもびっくりするのに、危ないからって、耕造さんを連れ戻しに行ったんでしょ」 「まぁな。連れ戻すとか、甘かったけどな」 「耕造さんは、連れ戻されるのを嫌がったの?」 「だな。知っての通り、頭ガチガチのジジイだから」 「でも、豊作はなんとか説得しようとしたんじゃない?」 「……まぁ。バカだよな」 「誰がバカなの?」 「俺が」  俺は足元に落ちていた石ころを蹴飛ばした。 「俺が、バカだったって思う。なんで説得できるなんて思ったんだろう。結局また、中学ん時と同じことを繰り返すはめになって、マジでバカだ」 「田んぼなんてやってられっか、って、また言っちゃったの?」 「言ったような、もんだな。少なくともじいちゃんは、そう受け取ったと思う。俺のことを許してないって言ってたし。田んぼに入られるのも、本当は嫌だったんだと思う。邪魔だ、帰れって言われた」  ははは、と出たのは、乾いた笑い声だった。 「だから、俺はじいちゃんをそのまま田んぼに残して、あの場を去ったんだ。まさか、こんなことになるなんて、思いもしなかった」  だれが、想像できた?   まさか本当に、じいちゃんが雷に打たれるなんて。  あんな痛々しい姿になるなんて。あんな、覇気のないじいちゃんを見たのは、はじめてだ。 「……俺の、せいで」 「違うよ」  ぴしゃりと晴が言う。
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