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せんべいの袋を開けてばりりと囓る。塩っ気がうまい。
「今お兄ちゃんが言ってたじゃん。見えない友達としゃべってたんでしょ。たのん、だっけ」
慣れた様子で実は言う。
最初こそ病院行きだのなんだの言って薄気味悪そうにしていた実だったが、他の家族含め、俺の状況を受け入れてくれることにしたらしい。いろいろあって、哀れまれているだけかもしれないが……。晴にしてもそうだが、高い順応性には助けられている。
俺はせんべいを囓り、麦茶で飲み下してから答えた。
「その、かかしをだな」
「かかし? 作ってるじゃん。風が吹いただけで藻屑と化しそうなかかしを」
「藻屑はさすがに言い過ぎだぞ。違って、普通のかかしじゃなくてだな、その、たのんの、かかしを……」
「へぇ、なに、ついに友達を自分の手で作ることにしたの?」
その表現はなんか、ほんとにヤバイ人じゃないか。
「いいじゃん。作ろうよ。私も手伝うから」
「なんだよ、急にやる気になって」
「だって、私達には見えないお兄ちゃんの友達がどんな人なのか、気になるじゃん。人かも分からないけど。人、なんだよね、一応?」
「人だよ、一応。人じゃなかったらなんになるんだ」
「さあ? 狸とか狐とか?」
「化かされてるのか、俺は」
「まあ、とにかく」
実は竹を手に取ると、長さを調節して紐でくくりつけた。
その手際のよさと言ったら、かかし職人になれそうな勢いだ。
あっという間に骨の部分を作り終えると、実は藁を取ってくる。
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