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休み明けの火曜日。
歩はオフィスビル街にある、地下鉄の地上出口の前で、得意先にアポ取りの電話をかけていた。
同じ千代田区エリアの同僚が突然辞めたせいで、彼の担当していた得意先も、一時的にだが受け持つことになったのだ。向こうの人事担当に挨拶がてら、就業中のスタッフにも何か問題がないか聞いておこうと思った。
「――はい、今日の午後三時ですね。承知致しました――失礼します」
歩は、相手が受話器を置いたのを確認して、通話を切った。
今日電話をしたのに、今日会ってくれるという。有難い。
歩は自分の手首を見た。そこには恋人からもらった時計が巻かれている。
今朝、歩の部屋から出て行くときに真司が着けてくれた。
文字板は黒、時字と分針、秒針は白で、シックだ。でも、ベルトは黒い皮で若者向けの印象を受ける。だが、ケースとかんは銀色で高級そうだ。文字板をよく見ると、『BREITLING』というブランドロゴらしき文字が刻印されている。ビジネスでもレジャーでも使えそうなデザインだ。
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