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パシャ、とシャッターを切ると、ファインダーを覗いていた君がこちらを見た。
「何してるの? 風景写真が課題なのに」
自分に向けられたレンズにいぶかしげな顔をするのも可愛らしくて、笑いかけてまたシャッターを切る。
「撮ってるよ。たまたま、そこに君がいるだけだ」
「……いいけど。課題、突っ返されても知らないわよ」
白い頬を赤く染めて、君はまたカメラを構えた。真剣なその横顔を四角い枠越しに見つめて、また笑う。
(いいんだ。だって僕は、転校してしまうから)
大事なことを言えず、カメラで顔を隠して、ただ君の横顔を写し続ける。今このとき、この場所でだけ、僕のだけのものの君を、写真に閉じ込めたくて。
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