木刀綺譚

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 流行りのアニメを一度にチェックしたいのであれば、やはり秋葉原だろう。あそこに行けば店先の看板を見るだけで今流行りのアニメからゲームまで(実はゲームも苦手だ)チェックできる。もっとも、それだけの為に足を運ぼうとも思わないが……  ところが、肩からボディバッグをぶら下げて近所を散歩している時にたまたま出くわした同級生は、そんな僕をしつこく秋葉原に誘うのだった。 「ダンナァ、いい美少女アニメがありますぜ」 「なんだよそのダンナって……」  ふざけた物腰の彼に、僕は呆れた顔を作った。彼とは中学からの付き合いで、『銀魂』のアニメを勧めてきたのも彼だ。今は同じ高校に通っている。ただ、彼が僕の素性を知らなければ、今もこんなに話しをするような事はないのだろうなと思う。 「とにかく秋葉原には行かないよ」  と、彼は大きな溜め息を吐いた。 「なんだよもう……大江ってホント、漫画家のくせにアニメ嫌いな」  そう、僕は現役高校生漫画家だ。もっとも、その高校も来年には卒業だが。 「だいたいアニメ化は全ての漫画家の願いだろ。違うか?」 「違うよ」と、僕はさらに呆れた顔を作った。 「少なくとも僕は自分の漫画をアニメ化してもらいたいとは思わない。漫画には漫画の面白さがあるんだ。だけど別にアニメが嫌いなわけじゃない。僕はただ漫画の方が好きだというだけだよ」 「分かった分かった。分かったから秋葉原は付き合ってくれよ。一人で行ってもつまらんし」     
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