木刀綺譚(原案・永井荷風著『ぼく東綺譚』)

木刀綺譚

　僕はアニメというものをほとんど見た事が無い。
　おぼろげな記憶をたどれば、今から十年くらい前、小学二年生の時に見た『イナズマイレブン』。それが自分から進んで見た最初で最後のアニメのように思う。
　中学生の頃、同級生に「これくらいは見ておけ」と言われ『銀魂』を見せられたが、正直興味が湧かなかった。あの作品はなかなか字数が多く、それを苦手だと言う人がたまに居る。僕にアニメを勧めてきた友人もその口で、読むのが面倒だからアニメに逃げているとしか思えず、僕はますます興味を無くした。漫画には漫画にしかない面白さがあるし、そっちの方がもっと面白い、と言った覚えがある。
　しかし、アニメが今やオタクと呼ばれる人種の範疇を超えて広く親しまれているのもまた事実で、人気の深夜アニメの放送があった次の日などはクラスの半分はその話題で持ちきりになる。だから、せめて僕も人が何の話しをしているのかくらいの事は分かるようにしておきたいと思って、流行りのアニメくらいはチェックし、原作に目を通すように努力している。