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 退勤のタイムカードを押してから3時間が経過した。デスクには山積みの書類と缶コーヒーが数本。口につけて上を向いてから、その缶が空であることに気づく。それでも缶を振り、空きっ腹を満たそうとした。 「おなか、空いたな……」  私はヒールを足に引っ掛けながら呟く。椅子に凭れながら時計に視線を向けた。何度も見た時計は8時を差す。いい加減早く終わらせないと。私は再びパソコンに向かおうとする。文字やら数字やらを入れていくが、目が疲れて画面が眩しい。 あ、また間違えた……直さないと。慌ててバックスペースキーを押したつもりが、『¥』が増えていく。声を漏らしながらキーボードを確認し文字を消していると、突然ライトに照らされた。その方を見れば、いつもの警備員さんだった。 「また翼ちゃんか。こんな時間まで何してるんだ」  ちょっと田舎っぽい訛りのお爺さんが社内に入っていく。デスク周りを歩いては、点検する場所をライトで照らし確認していった。 「残業ですよ。いつもの」 「早く帰りなさい。頑張るのもいいけど、身体壊すぞ」     
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