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 彼の手を振りほどき、時折片足飛びをしながら電車に乗り込む。ドアが閉まる頃には息切れをしていた。残業した身体には堪える。 変な乗車をしたせいか、乗客の視線が集まった。恥ずかしくなって下を向くと、右脚のストッキングが裂けている。私は右半身をドアに向け寄りかかった。 今日はいつも以上についてない。苛立ってきて頭を掻く。絶対あの変な人のせいだ……まだあの人ついてきてないよね。周囲を確認するが、白いワイシャツの彼はいない。それ以上に自身へ向けられる視線の方が気になる。私は外の景色を見るふりをして目を閉じた。  自分の降りる駅のアナウンスが流れ、目を開ける。外には見慣れた住宅街の景色。ドアが開き、他の人に混じってゆっくりと降りていった。ICカードをかざし、改札口を出る。色々あったけど、結局は着いてしまった。 駅を出て住宅街に入っていく。街灯は少ないが、いくつかの家の明かりがぼんやりと道を照らした。少し足を引きずりながら歩いていると、家族の暖かい笑い声がする。その声に自分の両親を思い出した。 ここまで自分を育てて送り出してくれた両親。2人にこんな姿見せられない。私はそこから逃げるように早足になった。ぼんやりとした明かりが自分の惨めさを際立たせる。 どうしたらあんな扱いを受けずに済むの。仕事が上手くこなせない自分が悪いの。涙が出てきて、それがまた情けなくて折れた方のヒールを脱ぎ走り出す。今は家に帰るしかない。横断歩道に差し掛かったそのとき、後ろから腕を掴まれる。強く引っ張る手に振り返ると、例の男だった。
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