二.

4/6
前へ
/8ページ
次へ
「いや、違うだろ。もういっぺんお大名んとこ行って聞いてみろって」 とは口が裂けても言えない。 二人は考えた。うどんに蜜でもかければ甘くはなるが、味の保証はない。マズいもんを食わせたとなってはさらし首にならない保証もない。 正直に「ありません」と言ってしまうか? ちらりと店の奥を見ると、にこりと笑って金色が手を振っている。 この状況で「ありません」は言い終わる前に心の臓が止まってしまうだろう。 そのとき店の外から物売りの声が聞こえた。 六兵衛はポンと膝を叩いて汗だくの主人に顔を近づけた。 「考えがある。先にどんぶり用意して待っててくれ」 そういうと急いで店を出て行ってしまった。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加