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二人に近づいた役人はこう告げた。
「食事を外に持ち出せ。卓と椅子ごとだ」
これまで聞いたことがないが、おおかた新しい打ち首のやり方に違いない。
二人は涙をふいてうなずいた。
「殿は写真を撮りたいとおっしゃっている」
「写真・・・でございますか?」
この時代、日本にも写真の技術は入ってきていた。お付きの者に写真技師がいるというのだ。
撮影のためには陽の下で長時間じっとしている必要がある。そのためうどんを席ごと外に出せということであった。
「殿が食事をしているところを写真に収めるのだ」
「はあ、左様でございますか。それはなによりででございますな」
うどん屋の主人は状況を飲み込めずにいたが、とにかく首がつながったのはなによりだ。
「食事の様子を撮影し、将軍様にご報告いたすのだ。
お気に召せば褒美がもらえることもある」
「褒美でございますか。
失礼ながら、それはいかほどでございましょう?」
「言い値(イイネ) だ」
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