二.

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二人に近づいた役人はこう告げた。 「食事を外に持ち出せ。卓と椅子ごとだ」 これまで聞いたことがないが、おおかた新しい打ち首のやり方に違いない。 二人は涙をふいてうなずいた。 「殿は写真を撮りたいとおっしゃっている」 「写真・・・でございますか?」 この時代、日本にも写真の技術は入ってきていた。お付きの者に写真技師がいるというのだ。 撮影のためには陽の下で長時間じっとしている必要がある。そのためうどんを席ごと外に出せということであった。 「殿が食事をしているところを写真に収めるのだ」 「はあ、左様でございますか。それはなによりででございますな」 うどん屋の主人は状況を飲み込めずにいたが、とにかく首がつながったのはなによりだ。 「食事の様子を撮影し、将軍様にご報告いたすのだ。  お気に召せば褒美がもらえることもある」 「褒美でございますか。  失礼ながら、それはいかほどでございましょう?」 「言い値(イイネ) だ」 --- END -----
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