あなたの人生を一冊の本にします

7/11
前へ
/11ページ
次へ
 その本を見た瞬間、見てはいけない物を見てしまったかのような、そんな気分に襲われた。  出てきたのは文庫本ではなく、ハードカバー本だった。しかも装丁がやたらと凝っている。  表紙にはデカデカと「金本喜一郎」という金文字が鎮座し、その周囲には色とりどりの宝石が散りばめられている。  布製の表紙が所々光っているのは、金糸だか銀糸だか何かを織り込んでいるからだろうか? とにかく過剰な装飾が目立った。 「ほうほう、こいつは立派な装丁じゃないか! ――んん? おい君! これはどういうことだね!?」  本を手に取った途端、金本さんが店員に対してがなり始めた。何か不満があったらしい。 「この本……装丁は立派だが、あまりにも薄すぎないかね!?」  そう言って金本さんが本を店員に突きつける。それでようやく私にも分かったのだけど、確かにその本は装丁の立派さに比べてあまりにも薄すぎる。ページがほんの僅かしかないようで、本というよりは高級料理店のメニューみたいな感じになってしまっていた。 「これが……こんなものが、私の人生だと言うのか!?」 「私共はありのままをお作りするだけでございますので……どうぞ、中をご覧ください」 「中だって? こんなたった数ページで私の人生を――むっ? むむむむ? こ、これはっ!?」     
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加