第一章 他人を詠む

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第一章 他人を詠む

 次ページ冒頭の総歌(この歌集を総合的に表すという意味で私が命名した)に歌ったように、人は風であるべきでないかと、そう思いつつ且つ念じつつ、章タイトルというよりは歌集すべてのタイトルとすべく、題名にすえました。ある聖人の言葉に「よどんだ空気を一掃するかのように、谷に野に、一陣の風が吹き抜けて行く」というのがあります。私の好きな文句で、従ってこのような趣旨のもとに総歌を一首ひねった次第です。しかし不徳の身のいたりで現実には清新な風であるべきものが、どうかすると鬱屈し、よどんだ空気になってしまっているような我が身の塩梅なのです。いつかは爽やかな風となるべく、そう生きたいものとの願いを込めつつ以下に種々の和歌(短歌)を綴ってまいります。このエブリスタに「人生詩集」と題して詩の数々を人生の年代順に記しておりますが(こちらも乞う、ご通読)、同趣旨のもとに若き日から今にいたる我人生の折々を以下に歌って行く次第です。ただしこの第一章はいま現在ン十才における私の目で他の風(すなわち他の人々)をウオッチした歌を取りそろえております(尤もそれのみとは限りませんが)。そうすることで私こと詠者の視点、命の傾向性をもおわかりいただけることかと存じます。いわば自己紹介を兼ねたこの第一章のページとなっております(※当エブリスタには章立ての機能がない様なので各章として1ページを使わねばなりません)。エブリスタ読者にはお若い方々が多いのかも知れません。「和歌なんて」と敬遠されるかも知れませんがしかし思うに「和歌こそは我々日本人のルーツ、心のふるさと」なのです。この和歌というツールは千数百年前から延々と且つ綿々と続けられて来たもので、そこには古代から現代に至る、あらゆる階層の日本人たちの思いが、その生き様さえもが込められているのです。言葉を変えればいわばタイムマシンのごとくに和歌を介して、直接的に古代から現在の人々に至るまで、彼らと肌感覚でふれあうことができるものなのです。ですからどうか、いつかは若きあなたがたの血肉と化して行くでしょうこの和歌(短歌)というものに向かい合っていただければ幸いです。ときおり歌にそえて言葉書き(解説文)も記してありますので、それほど意味を取るのに難しくはないと思います。さあ、ではどうぞ和歌の世界をご堪能くださいませ。歌人・多谷昇太より。
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