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シメニカ、ホダ
「カルメンよしるしある身ぞ君がむた舞ひさせなむやなほ狂ひてんや」
※「がむた」=「とともに」「といっしょに」
※背も露わな赤いドレスの舞姫に感激。‘男’を問うように私を睨みつけて踊る…雌豹を見るようでした。
「あなやあなフランクフルトに置きつるぞひそか夢見しあが妻なるを」
※「あなやあな」=「ああ、なんというこだ!ああ!」 「あが」=「わが」
※12月某日、フランクフルト駅で赤いヤッケ姿の日本女性と邂逅。フランスで一緒にバイトをと誘われたが私はスイスへと旅立ちました。止むを得なかったのです。しかしこれほど後ろ髪を引かれたことはありませんでした…。
「水頭のあはれ捨子ら泣きをりぬベオグラード駅構内たりき」
※旧ユーゴスラビア・ベオグラード駅構内。5、6才くらいの、一人が水頭症の兄弟が身も世もなく泣き叫んでいました。おそらく出稼ぎに来た中東あたりの親が万策尽きて放置して行ったのでしょう。恐ろしげに、また当惑しながら市民は通り過ぎるばかり、私もその一人でしかなかった。何が出来たでしょうか…。
「これはしたりペルシャの姫の寝をるなり手には小銭が、首元にライ病班」
※一年半を過してヨーロッパを旅立ったのです。中近東経由で。途中イラン・テヘラン市内のこと、地下道を通った時そこにブルカを来た若い女性が寝込んでいました。なぜ?と驚きましたが首元を見れば隠しようもない籟病班が…憐れむ市民が差し出すように投げ出された手の平にアラーの御慈悲を置いて行くのでした…。
「泣きたかりこれが星夜か月光かコラーンよいざなへ我は打たれたり」
※アフガニスタン、ヘラート。安宿に宿泊したが調度品も何もない、蚊が巣食うだけの部屋に閉口して中庭で寝ようと表に出る。出た途端「ん?昼?」とでも見違うような明るさに面食らった。見上げれば実に満天の星!そして月明かり!ショックでした。日本の空も私の心も、どれだけ曇っていたか…。?…シメーニカ、ホダー…?流れ来るコラーンの歌声に回教徒ならずも額づきたい思いでした。
【シメニカ、ホダ(親愛なる神よ)】
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