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サマネイ
「あなや、な拝みそ街に会ひつるシャムの婦(ひ)人(と)、経文ひとつ知らぬに」
※「な~そ」=「~しないでくれ」
※街を歩けばよく拝まれます。特に婦人に。経文ひとつ、タイ語ひとつ判らぬ身なのに…忸怩どころか、信者に対して申し訳ない限りでした。
「はたやはたみ山も塵にも堪へかねていづれ苦とせば逃ぐるなめり」
※僅か3ケ月の沙門生活が持ちません。不本意極まる醜聞を買ってしまって。修業の厳しさ云々ではありませんでした。
「住職は日泰の間の子高徳と永平寺よりの僧得々と云へり」
※住職はタイと日本の間の子でした。サマネイ(一時期出家するだけの見習い僧)などはまず絶対に会えない、言葉もかけてもらえない存在です。
「白孔雀住職背後にあそぶなり人が鳥か鳥が人か涅槃の写し絵」
※みっともない男(つまり私)が呼ばれて行った時、住職は寝台に横になって寛いでいました。その背後に開き放たれた大きな窓があって白孔雀が遊んでいます。どちらかがどちらかの化身と見えたことでした。
「報恩にまさる行なしそれ為せと言魂がむた云ふが尊さ」
※「御両親はお元気ですか?」と尋ねられた。勝手極まる洋行、その他親不孝すべてを見通していらっしゃるが如し。仏教の行の第一は報恩と力強く云われる、その言魂が痛い…。
「サマネイゆ先へすすめと人の云ふ今還俗するに何の心ぞ」
※お侘びして退室する時「早くサマネイを脱して先へ進むように」と一言そう云われました。僧俗ともに人の道と云うがごとし。ならば、早くサマネイ(見習い)を脱して一人立ちせねばなりません。とにかく、本来なら目通りもかなわぬ御住職から、何のはからいからかこのように教えをいただくことができました。ン十年後の今日でも忘れることができません…。
【このような感じの白孔雀でした。Makaluさんの作品】
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