第七章 風吹かず(二)

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「退院の朝は来たりぬうつそみの世にぞ帰らん改めの世や」 「六十(むそ)余年過ぎにしわが世返すならおのれ変へてぞ真とすべし」 「年寄りの冷や水ならぬ新人(あらひと)ぞ老ひてもいよよ務むるが性」 「憂き世経てとありかかりともなにかはせん魂(たま)の御風に塵と吹かせよ」 「かたければくづしてつながん仮名のごと人の心もいでかくてこそ」 「彼我一如吾(わ)と汝(な)がために鐘は鳴る死の定めやは生(あ)れしゆゑ述ばふ」 「せしことも習ひもつかぬことなれど他を思ひなむ強ひを尽くして」 「人もがな汝(なれ)と汝(な)がこと伺ひたし聞らく少なく云ふらく多み」 ※「~もがな」=「~が(居て)ほしい」 「なむ」をすゑつづり終へたし我がことを快・暴流の身ただ仕舞ひたし 「松返り痴れ者愚者はすさぶまじ言挙げせしを空ろとせなく」 ※「松返り」=枕詞です。 「想念の悔ひと改め行のそれ働くさまは比べかぬるかな」 「友来香(ゆうらいしゃん)睦むほどにぞ癒さるる心観ぜばむべ‘人’の‘間’なり」 「道はづし吾(わ)が荒(す)ぶほどに傷つけるはらから見ればやがてはあらじ」 「誰も知る積み木崩しの幼さを旧りても続く正さぬかぎり」 「すね者の独り身ままのあさましさなど聞かばしもさ在るとなくに」 「いささ川夢にあらはれ吾(わ)を浸すぬるき流れぞ胎内(ふるさと)ごとし」 ※「いささ」=「小さい」 「夢中におもふどちらの声あはせ名乗らせたまへと我を推すめり」 ※「おもふどち」=「ともだち」 「空おほふ扇とも見ゆうろこ雲そこゆ風吹く天衆あふぐか」 ※あれほどの見事なうろこ雲を見たことがありません。空一面のうろこ雲!清風が下って来ました。平安時代の貴人・歌人たちが空にいて、扇をあおいでくれているような… 「歌詠みは時空を超えて呼ばふなり歌神歌聖よ訪ひたまへ」 「かへりなむあの日あの時ガン臥所もばら終りと覚えしものを」
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