第1話 駆け出し魔王ヒューゴ

1/5
131人が本棚に入れています
本棚に追加
/257ページ

第1話 駆け出し魔王ヒューゴ

薄暗い城内にて断末魔の叫びが鳴り響く。 声の主は相当な巨体なのか、それとも人外な力を有する者か、その吠え声は多くを揺るがす程のものであった。 今、勇者の聖剣が魔王の胸元に突き立てられ、邪なる命を奪い去ろうとしていた。 世界を滅ぼすほどの力を持つ魔族の王であっても、それに抗う術(すべ)は持たない。 「グァァ! おのれぇ……矮小(わいしょう)なるニンゲンの分際で、よくもぉぉ!」 「これで終わりだ。魔王ヒューゴ。永遠の眠りに就くがいい!」 トドメを刺した勇者は息も絶え絶えといった様子だ。 彼の仲間も五体満足な者はおらず、みなが満身創痍といった有様だ。 想像を絶する戦いが繰り広げられた事は確実である。 「フフフ、私は、不死身だ! 覚えておれ、必ずや復活を果たし、今度こそはニンゲンの世を滅ぼしてくれようーー」 セリフを言い終える前に、魔王の体は朽ち果ててしまった。 辺りには遺骸どころかチリひとつ残らず、抜け落ちた聖剣があるばかりだ。 勇者は足を引きずりながらも愛剣を拾い上げ、それから振り返りつつ言った。 「みんな。帰ろう! 故郷に凱旋だ!」 誰もが立ち上がるのもやっとという様子だが、表情は明るい。     
/257ページ

最初のコメントを投稿しよう!