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アパートは住人のプライバシーを考えてか、造りはマンションに近かった。
ドアの前には壁があり、表札などを道行く人が簡単に見られないようにしてある。
こういう造りであれば、雨の日などは楽だ。
それに部屋に入るところを、人に見られたくはない。
アパートの裏側はちょっと広い庭のようになっていて、垣根が中を見られないようにしてくれている。
おかげで人目を気にせず過ごせるところが気に入っていた。
仕事が忙しい分、あまり人とは接したくなかった。
人嫌いなワケじゃない。
ただ、必要以上の付き合いはしたくないだけ。
こう考えるようになったのは、いつの頃だったか…。
「…やめやめ。さっさと風呂入って、飯食って、酒飲んで寝よ」
月が見えないせいか、気分が落ち込み気味だ。
やっぱり街灯の光だけじゃ、気分までは照らされない。
カバンと、コンビニから買ってきた食料を入れたビニール袋を揺らしながら、肩を竦めた。
アパートが見えてきたので、スーツのポケットから家の鍵を取り出す。
俺の部屋は一階の角部屋。
いつものように向かうと、玄関の前で人影を見つけ、足を止めた。
この廊下には電球の明かりがあるが、しかし玄関にいる人物は、明かりの届かない場所にいて、影になってよく見えない。
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