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「南の果てですっげー異剣士が悪さしてるらしい!最強の異剣士になるには、良い異剣を手に入れないとな!」
その噂はシドも聞いた事があった。
南極の先にある場所でAランクは下らないであろう異剣を使う剣士がいるという噂だ。しかもその異剣士は正気を失ったようで、周囲を燃やし尽くしながら進んでいるのだとか。
エルは噂の異剣士を討伐し、その異剣をいただこうとでも考えているのだろう。
「眉唾だろ。……だいたい、そんな危険な異剣士に勝つつもりでいたのかよ?」
シドの言葉にエルは「ぐ」と唸る。エルは馬鹿だが現実がわからない程ではない。
噂の異剣士には自分だけで敵わないであろう事はわかっているはずだ。
「なんとかやってやるさ!そのためのこいつだ」
エルは腰に提げていた鞘から剣を抜く。鈍色の光を放つ刀身は真っ直ぐに伸びていた。
直剣に分類される剣だ。その輝きは見事だが、異剣としての能力はいったい如何程のものか。
「それに私たちもいる。1人なら無理でも3人がかりなら、なんとかなるかもね」
エルに同意したのはクレアだった。
大地接続から続く戦火に備えて故郷では剣の訓練をしていた。3人は大人でも敵わないだけの実力を持っていた。
どれだけ強い異剣士だろうと、3人がかりならどうにかなる、と思えるほどに。
「まぁ、事に及べば俺も手伝うが……“異剣士に勝てるのは異剣士だけ”……その前に俺とクレアも異剣を手に入れないとな」
「……人、少ないな」
街にたどり着いた3人はバイクに燃料を補充するついでに街の様子を伺った。
当然とも言えるが、人は少ない。南の果てである事もあるが、この先が噂の発生源だからだろう。
「噂の信憑性は上がったな」
エルの呟きにポジティブシンキングで返答するシド。
そこに武器屋に行っていたクレアが合流する。
「ダメ、異剣はないって」
異剣は歴史や神話、伝説に登場する聖剣や魔剣に類するものだ。街の武器屋にないのも当然と言えた。
「おいおい、どうするよ?2人の異剣が手に入らないんじゃ俺1人で噂の異剣士と戦う事になっちゃうぜ」
エルが異剣を持っている事すら奇跡に近い。そこからさらに二振りの異剣を手中に収めるのは難しい。
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