1人が本棚に入れています
本棚に追加
/17ページ
「おーい、待てってエル!」
幼馴染の声に振り返る少年の名はエルネスト。最強の異剣士になると言って故郷を飛び出した若者。
エルネストーーエルに声をかけたのは幼馴染であるシド。短いアッシュブラウンの髪が似合う鋭い目付きの男だ。その傍らには2人の幼馴染であるクレアがいる。長い金髪の可愛らしい女子だった。
「おせーよシド!それにクレアも。次の街は目の前だぜ」
黒い髪は癖毛で所々が跳ねている。その顔つきは胸に抱く夢と同じく少年らしさが抜け切っていない。
「おい、前っ!」
再び叫ぶシド。振り返ったエルの前には大型のトラックが迫っていた。
「おっとぉ!?」
エルは急いでハンドルを切るとトラックとすれ違った。
「あっぶね~」と言いながらゆるゆると停止するエルの横にシドが止まる。
「お前のバイク、無人制御システムが壊れてただろ。さっきみたいな運転してたら、いつか轢かれるぞ」
「…そだな。てかだったら呼ぶなよ!」
3人はバイクで移動していた。
故郷を旅立ち、3人でのバイク旅。ちなみにクレアはシドのバイクのサイドカーに乗っている。
大人たちには無茶だと言われた。戦時中だから危ないとも。
しかし、誰もエルを止める事はできなかった。シドとクレアの2人は巻き込まれたクチだ。
エルの両親は早くに他界していた。エルは祖父母に育てられたのだが、その祖父母も先日逝った。
エルは遺された家財の一切を売り払い、代わりに異剣を得た。
胡散臭い行商人が相手だったため、詐欺られてはいないかシドはエルの事を心配していた。
“最強の異剣士になる”
そう意気込んで出てきたは良いが、エルに目的地はあるのだろうか?
「ずっと南下してるが、どこに向かってるんだ?」
シドが聞くと、エルは待ってましたと言わんばかりにニヤつく。
「南の果て……かつて南極と呼ばれていた、その先だ」
「南極の先ぃ?」
そこに何があると言うのか?エルの事だから「とりあえず南に行こうと思った」とでも言いそうだ。
しかし、クレアはエルの目的に勘付いたようだった。
「南の果てって……もしかしてあの噂?」
エルは大仰に鼻を鳴らして「その通り!」と言い放つ。
最初のコメントを投稿しよう!