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「……そうだな、だが噂になるくらいの異剣士だ。退治しようと考える者も少なくはないはず。もしかしたらやられた異剣士の剣が近くに転がってるかもな?」
苦笑しながらシドは言う。やられた者の異剣など縁起が悪い事この上ないが、こうなっては仕方ない。
「もし、見つからなかったら?」
「引き返すしかないな」
クレアの問いにシドは簡潔に答える。エルは何か言いたそうだが、現実の前に口を噤んでいる。
街を出ようとしたところで町民らしき男に呼び止められる。
「おい、アンタら。この先に行くつもりか?」
「そうだけど」
3人を代表してエルが答える。
「やめとけやめとけ。この先には何もないぞ、不毛の大地さ。
世界統一がなされてからは他所からの移住もあったみたいだが、どうも作物が実らなかったらしくてな。今は村1つあるくらいだ。……しかも今は噂のイカれた異剣士がその辺りを荒らしてるからな……今やその村もなくなってるかもしれん」
町民はどうやら親切心で3人を止めようとしてくれたらしい。
だが、3人の目的はそのイカれた異剣士なのだ。町民の言葉はむしろ3人の、特にエルの決意を固くさせた。
「そうか、ありがとう。でも行くよ、目的はその異剣士だからな」
エルはそう言うとアクセルをふかす。続いてシドも肩を竦めてアクセルを回した。
「ごめんなさい、せっかくの忠告を」
クレアが申し訳なさそうに言うのを聞いてシドは発進する。
町民は「俺は止めたからなー!」と叫ぶが、3人の耳に届いたかどうかは定かではない。
バイクで30分ほど進むと舗装されていない道に出た。
作物が実らず街は開発されていなかった。ゆえに道を作る必要もなかったのだろう。
遠くで砂塵が舞い上がっているのがわかった。
しかもそれはこちらに向かってきている。
「ねえ、あれ…こっちに来てない?」
「来てるな……行ってみるか?」
恐怖を覚えたのかクレアの声にはその色が混じっている。対するエルは興味深々と言った様子だ。
「危ないと思ったらすぐに引き返すからな。見たところ人のスピードだ。バイクなら充分撒けるだろう」
シドがエルとクレアの折半案を出すようにして、3人は砂煙舞い上がる何かに近づく事に決定したのだった。
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