第1章:最強の異剣士を目指して

6/17
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/17ページ
「……そうだな、だが噂になるくらいの異剣士だ。退治しようと考える者も少なくはないはず。もしかしたらやられた異剣士の剣が近くに転がってるかもな?」 苦笑しながらシドは言う。やられた者の異剣など縁起が悪い事この上ないが、こうなっては仕方ない。 「もし、見つからなかったら?」 「引き返すしかないな」 クレアの問いにシドは簡潔に答える。エルは何か言いたそうだが、現実の前に口を噤んでいる。 街を出ようとしたところで町民らしき男に呼び止められる。 「おい、アンタら。この先に行くつもりか?」 「そうだけど」 3人を代表してエルが答える。 「やめとけやめとけ。この先には何もないぞ、不毛の大地さ。 世界統一がなされてからは他所からの移住もあったみたいだが、どうも作物が実らなかったらしくてな。今は村1つあるくらいだ。……しかも今は噂のイカれた異剣士がその辺りを荒らしてるからな……今やその村もなくなってるかもしれん」 町民はどうやら親切心で3人を止めようとしてくれたらしい。 だが、3人の目的はそのイカれた異剣士なのだ。町民の言葉はむしろ3人の、特にエルの決意を固くさせた。 「そうか、ありがとう。でも行くよ、目的はその異剣士だからな」 エルはそう言うとアクセルをふかす。続いてシドも肩を竦めてアクセルを回した。 「ごめんなさい、せっかくの忠告を」 クレアが申し訳なさそうに言うのを聞いてシドは発進する。 町民は「俺は止めたからなー!」と叫ぶが、3人の耳に届いたかどうかは定かではない。 バイクで30分ほど進むと舗装されていない道に出た。 作物が実らず街は開発されていなかった。ゆえに道を作る必要もなかったのだろう。 遠くで砂塵が舞い上がっているのがわかった。 しかもそれはこちらに向かってきている。 「ねえ、あれ…こっちに来てない?」 「来てるな……行ってみるか?」 恐怖を覚えたのかクレアの声にはその色が混じっている。対するエルは興味深々と言った様子だ。 「危ないと思ったらすぐに引き返すからな。見たところ人のスピードだ。バイクなら充分撒けるだろう」 シドがエルとクレアの折半案を出すようにして、3人は砂煙舞い上がる何かに近づく事に決定したのだった。
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!