第1章:最強の異剣士を目指して

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砂塵巻き上げる謎のものに近づく3人。やがてその姿は視界に収められた。 「なんだ、あれは……?」 声を漏らしたのはエルだった。 それは人のカタチをしていた。しかし、その身に纏うのは人ならざる濃密な死の匂い…… 赤黒く変色した肌の奥に見える目からは正気の色は消え失せている。 「まさか……剣鬼か!?」 いち早く答えにいきついたのはシドだった。 剣鬼……それは異剣に正気を侵された者の総称だ。 「オオオオオオォォォォ!!!」 3人を見つけると雄叫びを上げた剣鬼。 「来るよ!どうする?」 異剣の拡散から少しして発見されたのが剣鬼だ。その生態や強さは未だはっきりしていない。 ここは退くべきだ、とシドが言いかけてエルが先に「いくぞ!」と叫ぶ。 「ここで退いてちゃ、何が最強の異剣士だって笑われちまうぜ!」 エルの目は輝いている。なにしろ異剣を手にしての初の実戦だ。シドやクレアを相手に訓練していたものの、やはり実戦とは血がたぎるものらしい。 「……この馬鹿が!バイクは置いてくぞ。危なくなったら即退却!いいな二人とも!?」 シドの案に2人は「応!」と返事をし、剣鬼を迎え撃つ事が決定した。 3人と剣鬼の距離はおよそ15m。今にも戦闘が開始してもおかしくないくらい空気は張り詰めている。 「鶴翼の陣だ!囲むぞ!」 昔からある陣形を3人なりにアレンジした鶴翼の陣。それは相手を三角形の中心に封じるフォーメーションだった。 1人が陽動、1人が助攻、1人が主攻という役割分担がある。 今の場合だとシドが陽動、クレアが助攻、異剣を持つエルが主攻となる。 エルの指示で陣形を組んだ3人。剣鬼は様子を伺うように3人を眺めている。 剣鬼はボロボロの甲冑を身に着けているように見えた。今は剣鬼と成り果てているが、こうなる以前は立派な剣士だったのかもしれない。 まずは小手調べだ、とシドが切り込む。 上段から思い切り振り下ろすーーーーが、剣は剣鬼の腕にガードされてしまう。まるで鉄に切りかかったかのような感触だった。 剣鬼はシドの剣を弾くと、そのまま爪を振るった。 「くぅっ!」 シドはそれを何とか受け流すが、勢いに押されて数歩後退りしてしまう。 生じた隙を剣鬼が見逃すわけがなく、剣鬼の肉を削り骨を砕く爪がシドに迫る。
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