現実

5/9
前へ
/348ページ
次へ
親戚でもない家、連絡は兄貴と立川さんだけが取ってた。 車で3時間、接点は見つけにくい。 安全と言えば安全だ。 立川さんの仕事はIT系のコンピューター関連の会社らしい。 仕事の接点もない。 ゆずるの為には良い。 立川さんの家は都心からは離れていた。 自然の多い環境で子育てをしたいと、夫婦で話した結果らしい。 旦那さんの太一さんは、時間を掛けて会社に行く。 奥さんの咲子さんは専業主婦。 それもゆずるを預ける上で有り難いと思った。 長女の美樹ちゃんは、ゆずるの姉のみつるとふたつ違いで、小さな頃から年に何度かは会っていたらしく仲が良かったそうだ。 葬式の日に、泣いていたのを思い出した。 駿くんはゆずるのふたつ下で3つ。 まだ状況も理解はできていない。 その分、ゆずるを姉として受け入れるのは早い様だった。 遊ぶ姿に安心した。 「どうか・・ゆずるをよろしくお願いします。何かあればすぐに飛んできます。連絡を下さい。」 深く頭を下げた。 右手の包帯が痛々しい・・ろくに話さない5歳になったばかりの子を置いて行く。 警察は未だ、ゆずるの年齢を調書には4歳と書いていた。 あの日、5歳になったのに・・。 「お預かりします。大切に・・させて頂きます。」 その言葉が有り難く、泣きそうになり・・逃げるように立川家を後にした。 毎月、生活費を送る約束をしてゆずるを託した。 それから5年、ゆずるに会ってない。 俺がウロウロすると危険だ。 犯人は未だ捕まっていなかった。
/348ページ

最初のコメントを投稿しよう!

713人が本棚に入れています
本棚に追加