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「あつっいな・・・。」 汗を拭きながら、ビルの中に入ると、逆に寒い位の冷たい風が吹いてきた。 遠野陽介はその場で汗を拭き、上着を着て深呼吸をする。 腕時計を見る。 アポを取った時間まで後10分。 今頃、ゆずるは・・いや、シュウはあの喫茶店で何か良い情報を聞けただろうか、そんな事を考えながら受付に歩いて行った。 「おはようございます。」 受付前で陽介は笑顔で話しかける。 受付嬢も立ちあがり、挨拶し頭を下げた。 「10時から、総務部の部長の高橋様と、お会いする約束になっております。遠野と申します。」 「伺っております。高橋が良ければ上にどうぞと、申しております。2階です。エレベーターで上がられて、出たらすぐ右になります。」 「分かりました。有り難うございます。」 軽く頭を下げて、言われた通りエレベーターに乗る。 (昔の話を聞きたいと言った相手を、ロビーでいいのにわざわざ中に入れるのか?) 少し不思議に思いながら、エレベーターを降りて言われた通り右に行くと、すぐに総務部というドアの文字が見えた。 ノックすると、返事が聴こえ扉を開ける。 役所の受付の様になっていて、人の出入りが多い部署なのだと分かる。 一番、近くの女性が席を立ち、 「どういったご用件ですか?領収書発行なら、こちらに。提出はこちら。」 箱を手で示す。 (なるほど・・総務部か。) こういう部署なんだなと、思いながら否定する。 「すみません。遠野と申します。こちらの高橋様とお約束を・・。」 「失礼致しました。いらっしゃったら通すように言われております。こちらです。」 奥の部長室という所に案内される。 部屋がノックされ、女性が声を掛けると太い声が部屋の中から聴こえた。 60歳過ぎているだろう。 白髪交じりの小さくて小太りの、人の良さそうな男性が笑顔で迎えてくれた。
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