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「初めまして。遠野陽介と申します。お電話では失礼致しました。」
「いえ、どうぞ?掛けて下さい。慰労会のお話しでしたよね?」
座るように勧めると、高橋さんも座る。
応接セットも置いてある、立派な部長室だ。
「はい。お電話でもお話しましたが、姪と再会してから両親の話を聞かせております。お恥ずかしいですが、預けたままの姪で、これ位しか出来る事が思いつかずで。 両親は慰労会で出逢ってお付き合いをしておりまして。慰労会がどういうものかもわかりませんで・・。」
汗を拭きそう話す。
「ちょうど良かったです。それもあってここにお呼びしました。」
高橋はうきうきしたように小声で話した。
その様子に陽介は戸惑った。
「え?どういう・・」
高橋は顔を近づけて話した。
「12年前のコノハ製薬 開発部 遠野陽一さん。元白井製薬 事務部 野田由美さん、お二人の事でしょう?詳しくは分かりませんが・・。」
そう言われ、どっきりとする。
ソファーの背もたれにもたれて顔が遠くなる。
高橋は懐かしい目で囁くように言った。
「私は遠野君とも慰労会で話した事があります。慰労会は、営業同士だとまるで探り遭いの様で、開発者同士だとライバル心むき出しで・・仕方ないかも知れませんがそういう人が6割でした。
純粋に楽しむのが4割です。それでも、総務部ですと名刺を渡すと手のひらを返される事もしばしばです。」
「はぁ・・・。」
訳も分からず返事をする。
「その中で、純粋に慰労会を楽しみ、他の会社の人と話せるのは楽しいと笑顔で、名刺を渡しても総務部!大変なお仕事ですね、会社の屋台骨だ、と言ってくれました。遠野陽一さんは他の会社の人間にも信頼をお持ちでしたよ?事件は・・・・・・信じ、られず・・葬儀も、後ろの方で・・・参列させて頂きました。うちから、代表の様な形で・・。」
最後は詰まるように囁いた。
「それは・・気付かず。その節は・・ありがとうございました。」
深く頭を下げた。
「いえ。なので、お電話頂き有り難く、そして考えました。ちょうど良かったんです。今年はうちが幹事で、私がノートを持っております。歴代のノートも幹事が引き継ぎ1年保管しますから。」
「では・・ここに?」
高橋さんはその言葉に頷いた。
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