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「お茶もお出ししていませんが、事務にはお茶はここのを出すから良いと断りました。あまり時間はありません。これが今年のノートです。今、前の分をお持ちします。全部で10冊程です。 最初の頃は参加者も少なくて、途中増えますが、今はすっかり減りました。」
高橋は奥からノートを出しながら言い、テーブルに出した。
「よろしいですか?」
「ええ。急いでどうぞ。」
手に取りパラパラと最初のノートからめくる。
3冊目辺りに、遠野陽一の名を見つける。
そのだいぶ後に・・次の年だろう。遠野陽一、野田貴久、野田由美の字が目に入った。
「写真いいですか?」
「ええ。お好きにどうぞ・・。」
「この事でご迷惑は?あなたに・・。」
「いいえ、何も。ばれなきゃ問題はありません。会社の資料でもない。」
そう彼は笑った。
(有り難い・・・これは兄貴の人徳だ。
兄貴に助けられたのだ。)
「慰労会って、4社がいくらかは負担するんです。だから安く食べれます。それ目的で当初は若い社員が食事だけしに来てました。500円でホテルのバイキング食べ放題です。家族は1000円。それでも日頃忙しい社員にはホテルで食事・・家族サービスです。途中、減るのは家族は家族で静かに過ごしたいとか、上司に気を使いたくないとか、そういう人が増えたからでしょうね。」
話しを聞きながら、ノートをめくり写真を撮った。
「あと、他社に引き抜きなんて話も稀にあります。遠野さんは一度、白井製薬からお話しがあったはずです。結婚後ですね。」
「そうなんですか?」
「ええ、結婚してすぐかな?お相手が白井の事務でしょ?だからかな?って話してました。
でも、結婚前に日洋さんからも打診があったと、これは本人から聞きました。断ったとも、その時。」
「何も、聞いてませんでした。」
「お兄さん、人柄と仕事熱心さから他社からも人気でしたよ?ホントに・・出来た方でした。」
兄を誉められると嬉しいし、ゆずるに聞かせてやりたくなった。
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