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翌年の慰労会には、同期の鈴木と二人で参加した。
鈴木は新入社員の由美を一昨年、野田さんから紹介されたんだと言った。
「あーぁ。可愛い子はすぐ取られちゃうんだ・・。」
「取られちゃうって、物じゃないんだから。」
食べ物を取り、渡しながら言った。
「僕の方が先に紹介されたのに・・。あの時はお兄さんのガードが堅かった。」
「なるほど。新入社員だしな?」
「いい式だったし、由美ちゃん幸せそうだったしな。いいなぁ・・。僕にも可愛い子紹介してくれよ~」
鈴木は肩をに手を回して、絡んでくる。
「そんなに飲んでないよな?あんまり飲むなよ?この後、戻るんだろ?」
「ああ。納期迫ってるんだ。」
「手伝うか?」
「もうすぐ終わる。心配いらないよ。一人じゃないしね。お前はせいぜい、今のうちに新婚を満喫してろ!すぐに旦那はお払い箱になる。」
「ははっ。そうかもなぁ?仕事しすぎで、三行半はあり得るなぁ・・。」
「あるなぁ・・。」
二人で笑いながら話していた。
鈴木は同期入社で、少しふっくらとした男で、優しい笑顔に柔らかい印象で、少し人見知り。
入社してしばらくは、会話するのも苦労した。
慣れてしまえば気の良い、優しい良い奴だった。
結婚式も忙しいのに出てくれて、新婚旅行の休みを取るために仕事を一部、代わってくれたりもした。
帰り際、野田さんに声を掛けられた。
野田さんは体育会系だが、話しやすくいい人だ。
ただ、お互いにプライベートと仕事をきっちり分けようと言う話は、結婚式の前にしていた。
情報漏洩でもあって、お互いが疑われたら嫌だからねと、そう言われていい人だとも思った。
何より妻の兄だ。仲良くしたいと思っていた。
「遠野さん・・うちに来ませんか?」
と、言われて、キョトンとした。
一緒にいた鈴木も驚いていた。
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