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「断ったぁ?」
新川さんが大きな声を出した。
「ちょ・・。新川さん、声大きい。」
休憩室で缶コーヒー片手に、新川さんは隣に座って話した。
「だってお前・・あの白井製薬だぞ?うちよりずっと大きい。研究費だってうちとは比べ物にならないだろ?結婚したんだし、給料だって・・。」
勿体ない・・と付け足し、コーヒーを飲んだ。
「奥さん、妹だから気を遣って下さったんでしょう?別に、僕が必要って事ではないですよ。」
「それでもいいじゃないか?鈴木も羨ましがってた。」
「日洋にも以前、話しは戴いてたんですが、僕は小さい方が性に合っていると・・。」
「はぁ?日洋?俺なら行くぞ?迷わず! ホントにばっかだなぁ・・。」
「いいじゃないですか・・馬鹿でも。 開発部の皆と仕事するの好きですし。コノハ嫌いじゃない。」
「お前は・・。良い奴だなぁ!!よし、手伝ってやる、今の仕事。」
新川さんはそう言うと、抱きついた。
「いいですよ!遠慮します。ホントに、抱きつき魔ですね?酔うといつもですよ?」
「今は酔ってないよ?」
2歳上の肩書きは上司。
でも、仕事のサポートもしてくれるし、話しやすいし職場での兄みたいだと思う。
自分は弟がいて、兄はいないから、いたらこんな感じかな?といつも思う。
心強い、良い上司だった。
この年、最年長の部長が退職され、新川さんが開発部部長に抜擢された。
異例な若さの大抜擢だった。
自分も主任チーフなんて肩書きがついて、もう一人若い主任が新たに加わった。
「鈴木が二人か。ややこしいな? 鈴木兄、弟で良いか?」
「部長がそんな良い加減な…。」
僕も苦笑するが、二人の鈴木も困り顔だった。
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