クリスマス

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夜20時半頃、一報が入る。 「明日のトップ行けそうだぞ? 殺人だ。」 新聞社はざわつき忙しく動き出す。 「何処ですか?」 「そろそろテレビが…」 デスクがそう言うと、ついていたテレビがニュースを流す。 「おい、ボリューム上げろ!」 天井近くに設置されたテレビは、音が消されている。 番組の合間の5分のニュースは、入ったばかりの警察の映像と共に、リポートを繰り返す。 「先ほど〇〇市〇〇町、遠野 陽一さんの自宅にて、悲鳴が聞こえたと通報があり、警察が中に入った所、この家の住人と見られる遠野陽一さん、35歳と、妻の由美さん、33歳、長女のみつるちゃん、7歳、二女のゆずるちゃん、4歳、が刺されて倒れているのを警察が発見。 4人は病院に運ばれましたが、3人はすでに心肺停止の状態で、二女のゆずるちゃんは、意識不明の重体だということです。 警察では、この家から出て行く数人を見たという情報を元に、殺人、強盗の線で捜査を始めたと発表しています。 次は明日の天気です。」 ボリュームが消される。 茫然と、頭に片手を当てて、今のニュースを人事のようにブツブツと復唱する。 「○○市・・・遠野・・陽一。35・・・。由美さん。 みつる? ゆずる? 嘘だろ・・?」 (今、何が起こった?何が起こってる?) 「遠野!! 病院分かったぞ!早くいけ。取材は良い。現場は他の奴に行かせる。 こんなときで悪いが、4歳?微妙だけど、聞けたら話し聞いて来い。早くいけ!お前も囲まれるぞ?」 デスクの優しいのか非情なのか分からない声が聴こえ、メモを渡される。 自分の兄貴の死を報道するために、新聞記者になったわけではないはずだった。 遠野 陽介、32歳、新聞社に入って10年目。 独身、仕事命で、休みの日は兄貴の家に行き、義理の姉の手料理と可愛い姪の遊び相手をするのが楽しみだった。 この間行ったのは・・・半年ほど前だったか・・・。 「先輩、裏から! タクシー止めてあります。」 「悪い・・。」 裏口から出てタクシーに乗る。 正面玄関はもう余所の新聞社や週刊誌が、弟の存在を嗅ぎつけて来ていた。 現実味がなさすぎて、頭が真っ白だった。
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