しーな。

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「へぇ、分かってはいるんだ。しかも、本当に弁護士なんだね、しーな。」 玄関の扉に大きく貼ってある、椎名 巴弁護士事務所の文字をトントンとノックする。 「君、シュウ君? 何でここが?あ、いや、まぁ、入って。お礼も言ってないしね。」 突然の訪問に驚いたが、部屋に招き入れた。 gでは沢山名刺を渡した。 それを見て来たのだろうと椎名は思った。 「へぇ・・。弁護士事務所なんて初めて来たけど、こんな?」 「ははっ。いや、大手はもっとちゃんとしてる。綺麗だし、受付もいたりする。」 ちょうど客の後で、応接セットは綺麗になっていた。 ソファーに座るように促すと、それを無視してうろうろと部屋を歩いた。 (この子は、いつもこう・・ふらふら歩いてる感じがするな?) 「ふーん。資料はいろいろあるんだ・・。」 紙をペロッとめくり、黒猫は呟く。 「一応、仕事上の物だから見ないでくれる?」 お茶を入れて、座る事を再度勧める。 強く言うと座ってくれる。 ドカッと音がするように座ると足を組む。 (おっきな・・態度だな。) 椎名はそう思い苦笑する。 「そうだ、あの時はお世話になりました。君のおかげで無事に彼女は保護できました。」 「謝礼・・もらえた?」 「・・・もしかして?」 椎名が言うと、けらけらと笑った。 「いや・・お金を要求に来たんじゃないよ?貧乏かもだけど、人のお金を取ろうとは思わない。 一応、プライドはある。こんな手でもね?」 余り動きそうにない右手を見て、シュウは言った。 「じゃあ、何をしに?」 椎名は不思議に思い、聞いた。 こんな貧乏事務所に用があるなら・・? 「何か依頼?」 そう聞くと、ちょっと笑う。 「依頼・・するほどのお金もないんだよね。」 「相談は無料でのるよ? 助けてもらったんだしね。」 「しーなさ?バイト雇わない?」 「はぁ?・・無理無理。そんな余裕ないよ。」 今度は椎名が笑う。 「バイト料はいらない。ここの、掃除?汚れてる。これじゃあ、来た客も逃げる。」 「それは・・これから綺麗に。」 「事務所構えて何年?んー4…5年、もうちょいかな?未だに仕事が入らない。この汚れ・・一因はある。」 「う、ん・・。ゴホッ・・」 咳をして誤魔化した。
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