黒猫の涙。

しーな。

家出少女を探して手に入れた報酬。
口止め料も入って、良い金額だ。
しばらく何とかなるか、と考えて苦笑する。

椎名　巴（しいな　ともえ）、職業一応・・弁護士。
名乗っていいものかとこの頃考える。
一応、ちゃんとした大学を卒業し、苦労しつつも弁護士になり、大手の事務所に入れた。
なのになぜか、馴染めずに、今はよれよれの一張羅のスーツを着てちょっと小汚いおじさんになりつつある。

国選弁護人は金にならない、が全て断る訳にもいかない。
専門は企業顧問だが、それが嫌になってやめた以上、これからは民間の弁護士を目指す。
だが、上手く仕事はない。

相談はある。
相談料で食えない。
月に30件、相談があれば良いが、そんなにあれば、仕事のひとつくらい決まりそうだな、と考える。

「結局、やってる事は探偵の真似事。本職の探偵にも申し訳ないな。」
呟くとドアが開いた。