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本 編 ↓
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飛翔は私と同じ高一こういちで、意志の強い目が印象的なイケメンだった。
スポーツは何でも得意にしている。
何より性格がいい。
裏表がなく、誰と接しても態度を変えることはない。
思いやりがあり、とても優しかったが、正義感は人いちばい強く、曲がったことに対してとことん立ち向かう勇気があった。
やがて、クラスの女子のあこがれの的になった飛翔は“理想的な王子さま”と噂されるようになった。
男子からもそれをからかわれたが、一笑に付したため、誰からも憎まれることはなく、皆から頼りにされ慕われていた。
そんな飛翔と私はただの幼なじみだ。
家は隣同士だったが、一歩外へ出れば、飛翔は一番離れた場所にいる。
だが、クラスメイトの愛流は私と飛翔の仲を疑っていた。
愛流はモデルもやっている美少女だったが気が強い。
クラスを思い通りにするのは当たり前のことで、自分の役割だとすら考えている“お姫様”だった。
人気のある飛翔が好きで、彼女きどりでいつも側にいる。
普段はクラスメイトを召使いにして世話を焼かせていたが、飛翔の気を引きたがり世話をしたがった。
美男美女でお似合いだと誰もが噂したが、肝心の飛翔は迷惑している。
そんな飛翔の気持ちを理解できたところで、私は口にも態度にも出さずにいた。
にもかかわらず、ある秋の日の夕暮れ時に、愛流から校舎の裏へ呼び出された。
「あんた、高校一年にもなって、まだ飛翔と特別な関係でいるつもり?」
と、愛流は腕を組みキツい目で私を責めた。
私は何度もしている話を繰り返した。
「飛翔は……」
言い直す。
「飛翔くんは、幼い頃にお母さんを亡くしたから、家が隣だった私のお母さんが面倒を見ていただけ。だから“きょうだい”のように育ったけど、もう高一こういちだから、昔とは違う」
「そんな嘘に私がだまされるとでも思ってるの? 飛翔を呼び捨てにして仲がいいのを自慢して。憂理はサイアクだよねって、私が言うのに、皆うなずいてるよ」
私はため息をかみ殺す。
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