1.私を恨む女

2/6
6人が本棚に入れています
本棚に追加
/42ページ
 *****   本 編 ↓   *****  飛翔(ひしょう)は私と同じ高一(こういち)こういちで、意志の強い目が印象的なイケメンだった。  スポーツは何でも得意にしている。  何より性格がいい。  裏表がなく、誰と接しても態度を変えることはない。  思いやりがあり、とても優しかったが、正義感は人いちばい強く、曲がったことに対してとことん立ち向かう勇気があった。  やがて、クラスの女子のあこがれの的になった飛翔は“理想的な王子さま”と噂されるようになった。  男子からもそれをからかわれたが、一笑に付したため、誰からも憎まれることはなく、皆から頼りにされ慕われていた。  そんな飛翔と私はただの幼なじみだ。  家は隣同士だったが、一歩外へ出れば、飛翔は一番離れた場所にいる。  だが、クラスメイトの愛流(あいる)は私と飛翔の仲を疑っていた。  愛流はモデルもやっている美少女だったが気が強い。  クラスを思い通りにするのは当たり前のことで、自分の役割だとすら考えている“お姫様”だった。  人気のある飛翔が好きで、彼女きどりでいつも側にいる。  普段はクラスメイトを召使いにして世話を焼かせていたが、飛翔の気を引きたがり世話をしたがった。  美男美女でお似合いだと誰もが噂したが、肝心の飛翔は迷惑している。  そんな飛翔の気持ちを理解できたところで、私は口にも態度にも出さずにいた。  にもかかわらず、ある秋の日の夕暮れ時に、愛流から校舎の裏へ呼び出された。 「あんた、高校一年にもなって、まだ飛翔と特別な関係でいるつもり?」  と、愛流は腕を組みキツい目で私を責めた。  私は何度もしている話を繰り返した。 「飛翔は……」  言い直す。 「飛翔くんは、幼い頃にお母さんを亡くしたから、家が隣だった私のお母さんが面倒を見ていただけ。だから“きょうだい”のように育ったけど、もう高一こういちだから、昔とは違う」 「そんな嘘に私がだまされるとでも思ってるの? 飛翔を呼び捨てにして仲がいいのを自慢して。憂理(ゆうり)はサイアクだよねって、私が言うのに、皆うなずいてるよ」  私はため息をかみ殺す。
/42ページ

最初のコメントを投稿しよう!