心地ち良い

1/5
前へ
/5ページ
次へ

心地ち良い

 遠くで声をかけられているようだった……心地良い暖もあり、その声に特に気にするつもりもなかったが、何かが私の体に触れた事により、朧気な世界に溝が生まれる。  その溝からまたもや、聞き覚えのない人の声。 (誰 なの?)  だが、その声は除々にはっきりとした口調へと変わる。と同時に視界が開けた。 「お客様 大丈夫ですか?」 「う……ん?」  ぼやける目線の先に、人影。 「お客様」  再度声をかけられ、完全に我に返る。そして、目の前にいる、最寄り駅の駅員の姿で、ある程度の事は予測がついていた。軽く頭を掻き、目の前の駅員に軽く会釈をする。 「すいません 私 寝ちゃいましたよね……ちなみここって……」 「はい 終点の中多摩です」 「はははは やっぱり…… ちなみにこれから都内に出る電車って」 「申し訳ありませんが 今日はもう……」 「ですよね……」
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加