心地ち良い

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 落胆のため息を着くと駅員に追徴金を払い、ゆっくり座席を立ちあがる。先まで熟睡をしていたものの、乗車ギリギリまで友人と飲んでいたせいか、足取りが気持ちおぼつかない。  そんな中、ユルリユルリと駅へと降り立つと、薄暗い駅内を通り、外へと出ると、再度嘆息を漏らした。  と言うのも、自分の目の前には、店もなければ、ロータリーはあるうものの、タクシーの停留所もない。ただ、街灯が一基、弱々しい光を放っているだけだった。予想はしていたものの、はやり現実とやらを突きつけられると、落胆を漏らすしかできなかった。 「ホント 今日は最悪だわ」  ポツリと呟く私、野之巻千歳 27歳。今日昼間の企業のプレゼンで、見事に不採用。結構頑張って取り組んだ事もあって、それなりに手応えはあったとは思っていたものの、結果はそれに見合うものではなく……  その後、本当は、会社に戻り、報告が筋なのだが、直属の上司霧沢善部長という鬼門的人がいる……顔だちもしっかりの上、180センチの長身というハイスペック。しかも仕事も出来るのだが、物言いが強く、流石に今の精神状態で、彼の口跡をうけたものなら、直ぐにでも泣いてしまいそうな予感がした為、電話での報告。  その際に直帰を伝え、同僚に一献交えながら、愚痴を聞いて貰っていたのだ。 流石にこんな時に飲む酒は、悪酔いが過ぎたらしい。  現に最寄り駅を乗り過ごし、終点まできてしまうことなど、今までに経験がなかった。思った以上に堪えていることを実感する。
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