心地ち良い

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 ほぼ間違いなく私を認識している口振り……一瞬にして血の気が引き、踵を返そうとしたのだが、それよりも先に、声の主が近づいてきたかと思うと、私の腕を掴んだ。 「離して下さい!! 警察呼びますよ!!」 「おい ちょっと待て! 落ち着け野之巻!」  耳に入ってきた声で、またもや体が強ばる。というもの、あまりにも聞き覚えのある口調だったからだ。恐る恐る、後ろを振り向く。 「霧沢部……長……お疲れ様です」 「お疲れ様」  気が動転していたことや、流石にこんな場所に部長が現れるとは思ってもいなかった手前、全くもって先ほどの呼びかけに察することが、出来なかった。  が、一番はなんといってもプレゼンの件で、気まずい思いが尋常でないぐらいに押し寄せる。 (ど どうしよう……とりあえず 何か話さないと 罵声とばされるよね) 「部 部長は どうしてこんなところにいらしたんですか?」 「野之巻 さっきまで北原と飲んでだだろ?」 「はい」 「俺が 仕事の確認で 北原に電話をしてな その会話の最中に野之巻と飲んだ帰りで 結構飲んでいたという話を耳にして 昼間の事もあったから 野之巻の携帯にも電話してみたんだが」 「えっそうだったんですか! 全く気づかなかったです」 「だろうな……ここまで来てるんだから」 「ははははは……はい……」 「とりあえず 一足先に野之巻の最寄り駅まで行って間ってみたんだが 降りた気配もなかったし もしかしたらと思ってここまで来てみたら 読みが当たったということだ」 「そうでしたか やっぱり霧沢部長は凄いですね そんな先の事まで読んでしまうんだから」  本音は今日いっぱいは顔を合わせたくはなかったが、こうなってしまってはどうしようもない。 (勢いで謝るしかないよね)
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