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風と共に
空を見上げた。
エネスが見上げた先にはこの国と同じような島が浮かんでいた。
黒く灰色の空を浮かんでいる島・・・というか大陸は陸島と呼ばれている。
人族はそれぞれの種族ごろ、陸島に暮らしている。
エネスが見つめる先。
灰色の陸島。
そびえる山の様なものは、自然を利用して作った城らしい、
あの先に行きたいのに。ここからではずいぶん遠い。
エネスが立つ丘の上の風が強くなってきた。
長いスカートの裾は、真横に流され、長い髪をまとめていたピンも緩んでいたのか、外れて
長い赤い髪が風になびく。
ああ、こんな風の強い日は三角頭巾をかぶってくるんだった、とエネスは思った。
エネスの視線は見上げた島から離れない。
こんなに強い風が吹いたら、あの陸島は違うところに行ってしまう。
風任せに浮かぶ陸島は次にいつこの陸島に近づいてくるかわからない。
あの陸島には、ルイがいるはずなのに・・・
見えているのに渡れないむなしさが、苦しい。
風が急に強くなった。
エネスは広がっていた髪を片手で抑えて目をつぶる。
あたりがひんやりとした。二つの太陽が優しく照り続ける季節と言うのに、なぜ寒いの?
うっすらと目を開けると昼間のはずが、夜の様に真っ真っ暗になって。
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