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竜なんて生まれて初めて見たけれど。恐ろしいものだと聞いていたけれど。
確かに大きくて見た目は恐ろしいけれど。その瞳は優しく微笑んでいるようだった。
だから・・・緊張が少しほぐれたのかもしれない。
「竜さん。私を隣の浮島に連れて行って」
大きな声で、腹に力を込めて、風にかき消されないように言った。
後から考えれば近くで見たのは初めての恐ろしい竜に、よくそんなお願いを言えたものだと思う。
人族には翼はなく、鳥族か竜にお願いしない限り、風に浮いている陸島どうしは行くことができない。
鳥族は地上の果てにある長城の木の森にすむ。そこは私たちの人族が住む陸島は通ることがない。
地上は、猫族と犬族が始終戦っているらしい。他の獣人もいるらしいけれど。人族は自分たちの陸島から降りることはないので話で伝え聞くだけだ。
地上には海があって海にはまた海族あるいは魚族と言う海の中でだけ生きられる種族がいるそうだ。それも伝え聞く話。
見上げれば浮遊する大陸のほかに二つの太陽が浮かぶ空。
夜には二つの月が浮かぶ。
バルンディア・・・・この星はそう呼ぶらしい。
人族は風に吹かれて流れていく大陸に住む。エネスの島は広く、水も豊富で土地も豊かで、この島で人は生まれ、そして死んでいく。
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