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陸島はいくつあるのかわからないけれど、風任せに移動する陸島同士はなぜかぶつかることはなかった。
だから、隣に浮かぶ陸島のことなんていつも気にすることもなかった。
けれど今は違う。
私は大事な幼馴染で婚約者を、隣の陸島に取られてしまった。ずっと陸島同士は隣り合わせで浮遊することはあっても、ぶつかることはなかったのに。その時はぶつかって、相手の島から人が流れてきて、血が流れて、人が沢山なくなって、そしてレイが連れていかれた。
レイが鳴いている。泣き虫なレイ。いつも、悪さをする子供たちから守ってきたから。
レイは私の未来だから。
だから、レイを助けなければ。きっと泣いて、心配している。
(人・・・私に乗るがいい)
竜は口を少し開けてエネスの服を器用につまむとぽいと自分の背中に放り投げた。
びっくりしたエネスはあわててつかまれる所を探す。竜の背びれの一つをつかんだ。
これでレイを取り戻せる。これで元通りになる。これで幸せになれる。
そう考えていた。これが冒険と本当の恋のはじまりだとエネスはまだ知らない。
竜は赤い長い髪の少女が自分の背に乗れたことを確認して頭を上げ上昇していった。
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